1 模擬授業 の記録
<中村>
模擬授業の進行をさせていただきます、中村と申します。
模擬授業ということで、「もう、いやだなぁ。こんな休みの日にまで授業を受けさせないで」と、ニコニコとされている方がたぶんそう思われているのかなぁと思いますが、どうぞお付き合いください。
途中で授業がおもしろくないからと言って、タバコを吸ったりとかお菓子でも食べようかしらなんて、飲食喫煙など考えたりしないようによろしくお願いします。ご協力をお願いします。

では、皆さんは今から小学4年生です。メディアについて学習するのが大好きな小学生です。思ったことは何でも答えます。間違ってもヘッチャラです。第一、この学習に間違いなんてありません。小学4年生の自分が感じたことをそのまま表現してください。
時々指名をさせていただきますし、机間巡視をして「中村君、ちゃんとお話聞いている?」とかって、チャチャも入れますが、どうぞ対応をしてください。模擬授業というのは、ナビゲータの私と参加者の皆さんと一緒に作っていくものですから、どうぞ気楽な気持ちでご参加ください。

では、今日の日直の伸明君、始まりの挨拶をしてください。

<高橋>
起立。これからメディアの勉強を始めます。礼。

<中村>
「○○で変わる写真の印象」
さぁ、この写真を見ていただきましょう。
この方、どこの誰だ?と思われるかもしれません。実はMLK5の上村さんのお知り合いの方です。福田健助さんとおっしゃいます。
この写真の人物にどんな印象を持たれましたか?感じたままの印象を頭の中でつぶやいてみてください。
例えばこの写真に、こんな言葉をそえたらどうでしょう。なんだか、意欲に燃える県議会議員立候補者のようですね。
では、同じ写真でも、これならどうでしょう。ユニーク、コミカル、陽気なマジシャン、のように見えてきませんか?
では、さぁ、スーツの色が変わりましたが、同じ人物です。印象が変わりましたか?どんな言葉をそえますか?
たとえば、こんな言葉だったらどうでしょう。誠実、堅実、真実一路の叩き上げサラリーマン、に変身しました。
ところが、こんな言葉をそえたらどうでしょう。福田さん、ごめんなさい。人は見かけによらぬもの、腹黒、したたか怖いもの、という感じに見えてくるから摩訶不思議です。
さぁ、趣旨が分かっていただけましたでしょうか?
写真とそれにそえた見出し、同じ写真でも、送り手が何を伝えようとしているか、写真にそえた言葉ひとつで同じ人物の印象が違って見えてきたと思います。
では、これから皆さんに、写真に見出しをつけるという作業をしていただきます。情報の送り手の体験です。
封筒の中に写真が入っております。先ほど、伸明君が説明してくれました。写真は3種類あります。お隣さんと違っても心配しないでくださいね。
では、こんな写真、こんな写真、こんな写真、それぞれ3種類ありましたが、お1人には1種類だけ用意しています。同じ写真が2つだけ並んで印刷されています。
先ほどの赤いスーツを着たときの福田健助さん、紺スーツを着たときの福田健助さん、全然、違った見出しをつけていましたよね。同じ人物でも、全く別の印象を与えていました。
それと同じように、同じ写真が並んでいるんだけど、全く違った印象に見えるような見出しを考えてくみてださい。
うーん、すでに頭でひねってくださっている方や、早速ペンが動き出している方もおられるようですが、では、これから時間を3分ほどとります。用意始め。

小学1年生に先ほどの写真3枚を見せて、ぴったりだと思う題をつけてごらん、と言いました。写真を見て感じたことや思ったことを題にしたら良いんだよ、と言いました。すると、こんな結果になりました。
3枚のうち、1人1枚か2枚好きな写真を選んでそれに題をつけたんですが。
海の写真を見て、目に見えた物をそのまま書いた子が6人、例えば、「ボート」「海とモータースライダー」もう見えたものをそのまま書いているんですよね。「青い海」。
そして、見て感じたことを書いた例として、「きれいな海」「波の音が聞こえてくるみたい」「海は広いな」
そして、連想したことを書いた子が、「浜辺で遊ぼう」というのがありました。
それから、ケーキの写真では、見えたものをそのままで「イチゴケーキ」、「ケーキの上の葉っぱ」。
見て感じたことを書いた例、結構これ、次のは良いですけど、「さくさくイチゴケーキ」、「ケーキおいしそう」。
ケーキから連想したこととして、「お誕生日」、「お土産のケーキ」、ケーキなんて、お土産でもらわないとなかなか買ってもらえないという事情が出ているのかなと思いますが。それから、多分作ったことがあったんでしょうね、「ケーキできるかな?」というのがありました。
そして、カブトガニの写真を見た15人のうち、13人がそのまんま、「カブトガニ」、「カブトガニとカブトガニ」。もう、おっしゃるとおり、という感じで。それから、見えた物だからしょうがないんですけど「土」という子もいました。「砂」とか「土」という子もおりした。
そして見て感じたことを書いた例として、「かわいい」ですね。
連想したことで、「子どもが欲しい」。たぶん、「親子」という子がほとんどでしたので、この子どもがほしいとい言った子は、オスとメスがつがいになって動いているんだということを、情報を知っていた子なんでしょうね。
こんな感じで。
でも、このような結果は1、2年生だったら当然だと思います。
3年生くらいになれば、それは写真で見ればわかる、カブトガニだね、でも、あなたが題をつけるとき、写真だけではわからない情報をそえてごらんと言うと、自分しか知っていない情報というのを言葉で補うようになってきます。
実は、こういう活動というのは、前段階と言えるかもしれません、国語の作文の授業なんかでもよくされていると思います。例えば、作文に題をつけるという作業ですね。
読む人をひきつけるような題をつけよう、ただ「秋の遠足」「バス旅行」ではなくて、一ひねりした題を考えたごらんというような指導は、私たちは国語の授業の中でしているのではないでしょうか?
そういう国語科の授業などの積み上げがあって、例えばこのようなメディアの授業で、1枚の写真にも意味のある情報を与える、という活動ができるようになっていくのだと思います。

さぁ、そろそろ机間巡視をさせていただいてよろしいですか?
もう書けたよという方は、MLK5のスタッフが中を歩きますので、どうぞ渡してください。

<<一部省略>>

はい。では、海の写真からどんどん出していきたいと思います。読み上げたほうが良いですね。
「きらり夏 体験してみませんか」「夏のおわりに・・・」、はい、吉野先生でいらっしゃいます。
「若者をいざなう海」「しのび寄る海水汚染」、大塚校長先生です。中央小学校の校長先生がお見えになっております。
「夏の終わり」「マリンスポーツ真っ盛り」、あっ、始まりと終わりね。
「水上レスキュー出動!」「鳴門の大うず 美浜に出現!」。
「魅惑のプライベートビーチ」「この海をいつまでも」、ロマンティックな石井先生です。
「あなただけリゾートライフを」「台風の時は高潮に注意」。
「海辺の町へようこそ!〜笠岡よいとこ一度はおいで」「白い砂浜はどこへ行った?〜笠岡湾干拓を考える〜」、そうですねぇ、カブトガニいなくなっちゃいましたからね、それで。
「ボート事故増加」「観光客現象」、なんか笠岡の悲しい実態を言い表しているようで、とっても残念ですが。
では、次、イチゴケーキいきます。
「キイチゴのケーキ 特売100円」「こんな見本いかが?要望により作ります」、花野先生ありがとうございます。
「極上スイーツ さくさくケーキ」「食べてびっくり!激辛ケーキ」、そうですね、食べてみないと味まで分からない。これ、実は本当に笠岡市内の洋菓子店で売っているケーキなんです。
「2004年全日本洋菓子コンテストグランプリ作品」「神業"ロウ細工"もやは実物をこえた」、おお、すばらしい。
「とれとれ野いちごケーキ」「えっ、これでも消しゴム」あっ、なるほどね、川崎先生、金浦小学校の先生です。かわいい消しゴムいっぱいありますからね、このごろ。
「20代OLに人気NO1ケーキです」「被害者50人以上 毒入りケーキ」。
「木苺のサバランたっぷりと 洋酒を使ってあなたのティータイムにぴったり」「1日1800カロリーのあなたには危険!!」、三宅先生です。笠岡市内の司書をしてくださっています。
では次、カブトガニですね。
「特別天然記念物カブトガニ 養殖に成功 岡山県笠岡市」「カブトガニ生息地 汚染すすむ 確認されたカブトガニのつがい 岡山県笠岡市」
「カブトガニは幼齢期では共食いをすることがあります」「太古から姿を変えない生き物には、カブトガニなどがあります」、山脇先生、本当に共食いするんですか?はい、嘘でした。
「古代の姿 今に残す」「守れ カブトガニ。」
「生きつづけるカブトガニ」「親子?友達?夫婦?カブトガニ」
「長い間生き続けるカブトガニ 笠岡には今も生きているカブトガニ」「カブトガニは仲良し!」、平松先生です。
「カブトガニは知っている 地球の歴史 命の大切さ」「一緒にいると あたたかい」
「大切な自然いつまでも」「太古から続く愛」
「みんなで守ろう笠岡のカブトガニ」「猟師泣かせと言われたカブトガニ」
以上です、ありがとうございます。
今、2枚の写真を比べて見ていただいてもお気づきになったと思いますが、まったく逆の意味を表しているキャッチコピーが出てきたとき、みなさん、わっと反応されましたよね。笑い声がおこりましたよね。
それは同じ写真でも全く違った情報で、あぁなるほど、という声だったと思います。

それでは、最後にもうひとつ、音楽によっても印象が異なる、という例を見ていただきたいと思います。
この写真に音楽を重ねます。
どんな感じがしましたか?

<生徒>
物悲しいような。
暗いですね。
こんな曲があったこと自体がすごいと思いました。

<中村>
ボニージャックス、レコード盤、苦労いたしました録音するのに。
では、もう1曲かけてみましょう。
どんな感想をお持ちですか?

<生徒>
カブトガニがすばらしい存在に見えます。
カブトガニはすごいですね、本当に。ずーと昔からいて、すごいなと思いました。

<中村>
はい、ありがとうございます。
これ、踊りつきなんですけどね、もう踊らないことにします。

全く同じ写真です。さっきから私は画面を触っていません。でも、かぶせた曲がこれだけ違うと、印象が、「物悲しい」から「明るく元気」になってします。
実は、こういうことは、私たちの日常でも日々見たり聞いたりしていますよね。
例えば「9.11」。あの時、初期の映像は音なしでした。映像だけだったんです。ところが、2回目3回目とニュースで流れるときは、もうすでに物悲しい曲がかぶされていました。
私たちは、知らない間にそういう意味をつけられた情報を受け取っているのだ、ということを経験していただきました。

今日は、メディアとのつきあい方学習、最初の一歩でした。これから1つずつ学習を積み重ねていきましょうね。
では、日直さん、挨拶をしてください。

<高橋>
そのままで、姿勢を良くしてください。これでメディアの勉強を終わります。礼。